Rubyという言語は、あまたあるスクリプト言語の中でも一種独特の地位を築いています。それは、
Rubyという言語の面白さもあるでしょうが、やはりなんといっても大きな力となっているのが「
Ruby on Rails(以下、
Rails)」というフレームワークの存在でしょう。
Railsは、Webアプリケーション構築のためのフレームワークです。今でこそ、この種のフレームワークはさまざまな言語で出回っていますが、その元祖とも言えるのが
Railsなのです。
Railsが登場した当初、Web開発者の受けた衝撃は想像を絶するものがあったのです。それまで多くの技術者が四苦八苦して組み立てていたWebアプリの骨格をものの十数分で構築してしまう
Railsのパワーは、Webアプリ開発の方式を根本から変えてしまった、といってよいでしょう。
その後、多くの言語で、
Railsと同じ方式をとったフレームワークが次々と登場しました。これら「Rails流・Rails風」ともいえるフレームワークにより、Webアプリケーション開発は新しい次元に入った、といってよいでしょう。また
Railsの登場により、それまでマイナーな印象のあった
Rubyが一躍メジャー言語の仲間入りを果たした、といってもよいでしょう。
■Railsのバージョンについて
現在、
Railsは何度かのメジャーバージョンアップを果たし、「
Rails3」と呼ばれるバージョンが一般的に用いられています。2011年末現在、ローカル環境で
Railsをインストールすると「
3.1.1」というバージョンがインストールされますので、これをベースに説明を行います。
なお、
オンラインIDEによるクラウド開発についても触れる予定ですが、これで取り上げる
eXo IDEというオンラインIDEでは、2011年末時点で3.0対応のようです。したがってこちらは3.0ベースで説明を行います。
Rails3であれば、3.0も3.1も基本部分はそう大きな違いはありませんから、入門レベルでは問題なく学習できるでしょう。
■Railsアプリと「Heroku」について
実際に業務などで開発を請け負っているところが
Railsを採用することは多々あっても、ごく一般のアマチュアWebクリエーターが「それじゃオレも
Railsで……」と挑戦しようとすると、これが意外に難関であることに気がつくはずです。
まず、
開発環境の問題。
Rubyは基本的にLinuxでの利用を前提に開発されており、Windowsなどでは今ひとつ環境が整備されていない感じがあります。また
Railsは、コマンドラインでの操作を行うように設計されており、このあたりもあまりコマンドに慣れていないWindowsユーザーには入りにくいところがありました。また
Railsに対応した開発ツールなども今まであまり充実していませんでした。
そして何よりの問題は「
Rails対応の
Webサイト構築サービスがほとんどない」ということでしょう。自分でサーバーを建ててRailsアプリを公開する、などというのは個人の手に余ります。といってレンタルサーバーで
Railsが利用できるところなど数えるほどしかありません。あっても大半はLinuxベースの操作をマスターする必要があったりしました。
このような状況では、とてもアマチュアが手を出すことなどできません。――が、状況は変わります。Windowsでも、
Rubyや
Railsを利用する環境が整い、またRailsに対応した本格開発ツールも「
Aptana Studio」といったものがフリーで使えるようになりました。そしてレンタルサービスでは、セールスフォースによる「
Heroku」が本格運用を開始しました。
Heroku(
http://www.heroku.com/)は、
PaaS(Platform as a Service)と呼ばれる、アプリ構築の基盤を提供するサービスです。この種のサービスには、例えばGoogleの提供する
Google App Engineなどが有名ですが、
Herokuの名が知られるようになったのは、標準で
Railsアプリ環境に対応していたことです。
Herokuを使えば、
Railsで開発したアプリを誰でも公開することができるのです。しかも、ディスクとデータベースの使用量が一定範囲内ならば、誰でも無料で使うことができます。
■Herokuって使えるの?
「……でも、
Herokuなんてあんまり聞いたことないよ? そんなマイナーなところ、まともに使えるの?」と思った人。いえいえ、
Herokuは、実は非常にメジャーなPaaSなのです。なぜなら、
Herokuは、「
Facebookアプリ開発の標準環境」なのですから。
Facebookで採用しているぐらいですから、サービスとして安定して利用できることは間違いありません。また運営しているのはセールスフォースというクラウドサービスの老舗企業であり、更に
Herokuは
Rubyの開発者である松本ゆきひろ氏を迎えるなどしてRubyのためのPaaSを本気で推進していくつもりのようで、この先、長くサービスを提供し続けてくれることが期待できるでしょう。
この
Herokuの登場により、個人でWeb作成を行なっている一般ユーザーも、手軽に
Railsアプリを作成し公開できるようになった、といってよいでしょう。
Google App Engineが
Pythonや
Javaの開発を個人に開放したように、
Herokuにより
Rubyと
Railsが個人の手に解放された、といっても過言では(……ちょっとあるけど)ないでしょう。