ちょっと前までは、Javaといえば「サーバーサイド」でしたが、今や「Javaといえば、ケータイ」といってもよいでしょう。サーバーサイドでも依然としてJavaは広く使われていますが、これらは「エンタープライズ向け」つまり大企業向け、といったイメージが強いものです。アマチュアや、ちょっとJavaを勉強した人間が手軽に使うというものとはいいがたいでしょう。現在、サーバーサイドではPHPなどのスクリプト言語が広く使われるようになっており、パーソナルレベルならこっちのほうが手軽でいいや、という人は多いかもしれませんね。

これに対し、ケータイの世界は、今後どんどん成長していくことが予想されます。既にほとんどの人がケータイを持っており、その大半でJavaによるプログラムが動くのですから。インターネットも「パソコンよりケータイ」へとシフトしつつあります。何をするのも、「パソコンよりケータイ」なのです。ケータイ用プログラムの需要は今後、更にいや増すことになるでしょう。

では、ケータイならすべての機種で同じJavaが動くのか？というと、実はそういうわけでもありません。ケータイにはケータイの事情というのがあります。キャリアごとに独自性を打ち出しており、けっこう「てんでバラバラ」な規格になっています。ですから、「ケータイJavaをやろう」と思ったなら、まずその現状を理解しておく必要があります。

※主なキャリア（一部機種）の状況

ntt-docomo――「iアプリ」でおなじみですね。これは「DoJa」と呼ばれる規格が採用されています。また2008年末よりは次の世代の規格である「Star」というものも登場しています。いずれもdocomo独自の規格です。

ソフトバンク――「S!アプリ」というものですね。これは、Javaの標準的なケータイ仕様である「Java ME」というものに用意されている「MIDP」というケータイ向けの規格を採用しています。これにプラスアルファの機能を追加して独自性を出しています。

au/KDDI――ここは、メインのプログラム環境は「BREW」というJavaでないものに切り替わりましたが、それとは別に「オープンアプリ」と呼ばれるJavaプログラムを動かす規格も持っています。これも、Java MEというものにある「MIDP」というケータイJava規格をもとに作られています。

android――キャリアとは無関係に、独自のプラットフォームを搭載したケータイもあります。androidは、Googleによる独自のプラットフォームを使ったケータイで、日本ではdocomoから出てます。やはり、独自の規格によるJavaプログラムが動きます。

iPhone――独自の世界を切り開きつつあるiPhoneですが、これで動くJavaプログラム環境は「なし！」です。なんと、Javaは使えません。

「ケータイJava」の流れを見ると、だいたい３つの世界に分断されていることがわかります。１つは、docomoの「DoJo/Star」という環境。日本国内では、今でもdocomoが非常に強いですから、「はじめてケータイJavaをやろう」と思ったら、たいていはこのDoJo/Starのためのプログラム作りから開始することになるでしょう。ただし、これはdocomo独自の規格であり、海外では全く使われていません。世界的に見ると主流ではなく、むしろ「孤立した環境」である、という点は忘れないでおきましょう。

２番目は、ソフトバンクのS!アプリや、auのオープンアプリで採用されている「MIDP」という規格です。これは、Javaの開発元であるSun Microsystemsが携帯端末向けに用意した「Java ME」という標準仕様のケータイ向けの規格です。いわば、「Javaにおける標準的なケータイJava規格」といってよいでしょう。世界的に見ても、このMIDPがケータイJavaの主流トンっています。

そして第３の規格となるのが、「android」です。これは、ケータイそのもののプラットフォーム（OS）ですね。androidというケータイOSを作り、その上で作るプログラムがすべてJavaで書くようにできている、というわけです。ですから、MIDPなどとも互換性のない、まったく独自の規格なのですが、オープンソースであるということから世界中のあちこちで採用されつつあります。

では、何から始めるべきなのか？　やはり、実用面を考えるなら、現時点では「日本ならDoJa/Star」ということになるでしょう。すぐに多くの人が利用できるプログラムを作ることができるのですから。――ただし、そういうわけで「MIDP」と「android」についても、今後の動向は要チェックです。