多数の値を保管するクラスは、他にもまだあります。それは「NSSet」と「NSMutableSet」というクラスです。これらは何かというと、「集合」を扱うためのクラスなのです。

集合というのは、数学（算数？）に出てきた、あの集合のことです。多数のデータをグループとしてまとめる、あれですね。「プログラミングの世界で、集合ってどういう意味があるんだ？」と思うかも知れません。他の配列や辞書と何が違うんだ？と感じるでしょう。

集合は、「ユニークな値が、順不同でひとまとめにされたもの」といえます。NSArrayのように順番をつけて値は管理されません。またNSDictionaryのように同じ値をいくつでも保管できるということもありません。１つのデータは常に１つのみ。同じデータをいくつも保管することは出来ないのです。前に説明した「ユニーク」ということですね。

このNSSetには、コンビニエンスコンストラクタがいろいろと用意されています。主なものを以下に整理しておきましょう。

NSSet *変数 = [NSSet set];
NSSet *変数 = [NSSet setWithArray:《NSArray*》];

単純ですね。setは、空のインスタンスを作成するものです。setWithArray:は、引数に指定したNSArrayのデータを持ったNSSetインスタンスを作成します。

NSSet *変数 = [NSSet setWithObject:《id》];
NSSet *変数 = [NSSet setWithObjects:《id》,《id》, ……];

この２つは、保管するオブジェクトを引数に指定してインスタンスを作成するためのものです。setWithObject:は、引数のオブジェクト１つを持ったNSSetを作成します。setWithObjects:のほうは、保管しておくオブジェクトを引数に、カンマで区切っていくつでも指定することができます。

この他、NSSetではデータを追加するメソッドがいくつか用意されています。NSSet自体はデータの変更はできませんが、例によって「データを追加したNSSetインスタンスを新たに作って返す」というメソッドを用意することで、実質的にデータの追加が可能になっています。

NSSet *変数 = [《NSSet*》 setByAddingObject:《id》];
NSSet *変数 = [《NSSet*》 setByAddingObjectsFromSet:《NSSet*》];
NSSet *変数 = [《NSSet*》 setByAddingObjectsFromArray:《NSArray*》];

単純にオブジェクトを追加するだけなら、setByAddingObject:で十分でしょう。後の２つは、NSSetやNSArrayのデータをまとめて追加するものです。これらを呼び出して、新たに生成されたインスタンスを変数などに再設定して使えばいいわけです。

では、簡単な利用例をあげておきましょう。setWithObjects:を使ってインスタンスを作成した後、setByAddingObject:でデータを追加しています。

今回は、わざと既にある@"taro"を更に追加してみました。が、実際にNSLogで出力されるNSSetの中身を見ると、@"taro"は１つだけしかありません。NSSetが「ユニークな値を管理する集合クラス」であることが、なんとなくわかりますね？

#import <Foundation/Foundation.h>

int main (int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        NSSet* set = [NSSet setWithObjects:
               @"tuyano",@"taro",nil];
        set = [set setByAddingObject:@"hanako"];
        set = [set setByAddingObject:@"taro"];
        NSLog(@"%@",set);
    }
    return 0;
}